***************
シャワーを終え、服を着替えた進一郎を一人玄関で見送る。
誰かと一夜を共にした進一郎を迎えに行けたとしても、叶わぬ想いを胸に秘めたまま、その想い人とこれから一夜を過ごす俺ではない誰かの元へ進一郎を連れていくことは、俺にはどうしても出来なかった。
だから、いつも理由をつけて玄関で見送るのだ。
「進一郎、車は待機させてある。」
「ああ。後の事は頼んだ。」
「行ってらっしゃいませ。」
俺はいつもの挨拶をする。
そうすれば、進一郎は『行ってくる。』といつもの挨拶をするのだ。
だが、今日は違っていた。



