リヴァイは私が淹れたお茶で喉を潤してから、口を開いた。

「アルブレヒトもヒサーヌも、ロズモンドの連中に弾き返されるだろう。当然、ロズモンドは(かさ)に懸かって二人を追撃する。そこで、だ──」

 リヴァイはお茶菓子を無造作に口に放り込むと、口をもごもごさせながら説明を続ける。

「俺とハヴェルで、やんごとなき方々を追いかけてきた連中を挟み撃ちにする。ロズモンドは驚いて軍を引き、あらためてこちらの出方を窺うだろう」

「なるほど、良い策ですな」

 話を聞いていたベルナルドが、相槌を打った。

「お二人の伏撃が鮮やかに決まれば、ロズモンドは先の『ばか王子』たちの敗走も、計略だったのかと疑うはず。疑心暗鬼にかられて、しばらくは情報収集と分析に務めるでしょう」

「ああ。うまくことを繋げれば、2週間は時間を稼げるだろう」

「2週間──か」

 ゲンジが顎に手を当てて、呟いた。

「要するに我々は、2週間以内にレオン王太子を救出し、国境まで戻らなければならない。そうおっしゃりたいのですな、リヴァイ王子」

「さすがリアナの剣士殿、飲み込みが早くて助かるぜ」

 リヴァイは朗らかに笑った後、表情を引き締めた。

「ベルナルド、ゲンジ、それにレイア。リアナの身と、レオン王太子を頼んだぜ。ことが始まったら、俺たちには時間を稼ぐことしかできない。全てはお前たちにかかってるんだ」

 そしてまた、黒い瞳に優しい色を浮かべて言った。 

「俺の可愛い姫さんを、無事に国境まで連れ帰ってくれ」