「何を驚く。味方の将や兵たちの力量を識るは、将たるものの基本。その手足となって情報を集めるのが、我らクノイチの役目だ」

 少し憐れむような口調のキリカさんに、レイアが咳払いして言った。

「ご説明ありがとうクノイチさん。ついでにリアナがミーリア軍の主将だと言うことも、忘れずにいてくださると嬉しいわ」

 見えない火花を散らす二人に、ベルナルドは肩をすくめ、ゲンジは「控えよ、キリカ」とたしなめた。

 こんな時にやはり、自分の経験不足や力不足を感じてしまう。

 少しうつむいた私に向け、腰袋から「にゃあ」という声がした。
 ヴァールはいつでも、私のすぐそばで、私を励ましてくれる。

(そうよね、うつむいてなんていられない)

 私は顔をあげると、キリカさんに向き直った。 

「キリカさん。私はこの通りの若輩で、何も知らない王女です。だから目に映る全て、耳に聞こえる全てを受け止めて、自分を成長させたい。こんな私ですけど、よろしくお願いします、キリカさん」

 驚いたように私を見るレイアとキリカさんの向こうで、ベルナルドは大きく頷いて、ゲンジは優しい目をして笑っていた。