パシャリ

水を手の平にためて、顔にかける。


柔らかいタオルでぽんぽんぽんと数回叩くように拭くと、ほっと息を吐いた。




寝起きでも癖一つない黒髪が、朝の時間だけは嫌いではないと思える。









――……この黒髪は、私を縛り付ける鎖。






私は。






私だけが過去を清算して希望を抱くなんてあってはならない。






忘れないように私を絡みつける、呪い。






私は、幸せになってはいけない、忌子だから。
















……でも。











『俺は好きだけどな』





『髪ってさ、人によって全然違うでしょ。この髪色も、この艶も、全部真見さんだけのものだし、何より綺麗じゃん』









屈託なく笑う島津くん。








……あんなこと、初めて言われたな








もやもやとした、複雑な気持ち。





こういうの、なんていうのかわからないけど。