それから月日はすぎて、あっという間にクリスマス当日。









私はいつも通りカフェで、クリスマス限定ケーキの販売を担当していた。







流石クリスマス、というべきか。







常連さんだけでなく、新規の親子も買いに来たおかげでテイクアウトケーキの売り上げは普段の二倍以上にものぼる。











「誠ちゃん、大丈夫? さっきから全く休憩取ってないけど」



「大丈夫です。むしろ……」






仕事をしていると、頭の中が空っぽになって、ちょうどいいから。






「むしろ?」



「……何でもないです。とにかく、大丈夫です」









首を傾げた木下さんに、曖昧な微笑みを浮かべて、目を伏せる。






俯いた途端にするりと、肩から髪が滑り落ちた。






柔らかな照明光を、つるりとはじく黒髪。






思えば、鏡を見て、この容姿に嫌悪感を抱くことが、最近ではなかった気がする。






この黒髪も、瞳も。




あいつのことを考える時間すら。








……ほんと、いっぱいいっぱいだなぁ。