「…………誠ちゃん?」
「え?」
鈴を転がしたような、柔らかな声。
聞きおぼえのある声に顔を上げると、そこには鞠亜さんがいて。
「あ……え、っと」
鞠亜さんは、声をかけてからハッと気が付いたように瞬きをして、地面に視線を伏せた。
……思わず声をかけてしまった、みたいな感じかな。
へらり、誤魔化すように笑って、肩をかけた鞄の紐を握りなおす彼女。
はちみつ色の瞳が、戸惑うようにそろそろとせわしなく動いている。
「あ……えっと、ごめんね。私……もう、行くねっ」
「っ……待ってください」
走り去ろうとするその腕を掴んで、引き留める。
「鞠亜さん、話したいことがあります」
「え……」
大きく見開かれていく、その瞳。
長いまつげに覆われた満月が、つやりと潤んでいくのを見つめていた。


