「……ごめん、もう、行くね。陽くん、本当にありがとう」
「鞠姉!」
行かないで、その言葉は声にならずに、空中に溶けた。
そうしている間に、鞠姉は行ってしまって。
一人、屋上に立ち尽くす。
……鞠姉の、優しいまなざしが好きだった。
俺が変なことをしたって、情けなくたって、笑ってくれる、鈴のような笑い声が好きだった。
本当に、好きだったのに。
この気持ちは、本当なのに。
どうして鞠姉は、あんなことを言ったのだろう。
自分の心の中の柔らかい部分を、踏み荒らされたような。
……大切にしまっていた気持ちごと、自分自身を否定されたような、感覚。
これまでの自分は、全部、間違いだった?
鞠姉を好きでいた時間は……全部……?
……そんなの、これから、どうすればいいんだよ。
俺は……墨を流し込んだかのように暗くなっていく空を、呆然と見つめることしか、できなかった。
「鞠姉!」
行かないで、その言葉は声にならずに、空中に溶けた。
そうしている間に、鞠姉は行ってしまって。
一人、屋上に立ち尽くす。
……鞠姉の、優しいまなざしが好きだった。
俺が変なことをしたって、情けなくたって、笑ってくれる、鈴のような笑い声が好きだった。
本当に、好きだったのに。
この気持ちは、本当なのに。
どうして鞠姉は、あんなことを言ったのだろう。
自分の心の中の柔らかい部分を、踏み荒らされたような。
……大切にしまっていた気持ちごと、自分自身を否定されたような、感覚。
これまでの自分は、全部、間違いだった?
鞠姉を好きでいた時間は……全部……?
……そんなの、これから、どうすればいいんだよ。
俺は……墨を流し込んだかのように暗くなっていく空を、呆然と見つめることしか、できなかった。


