「……っふー」






大きく息を吐いて、どくどくと大きく脈打つ。









暴れまわる心臓を、ぐしゃりと握りしめた。









……心臓、破裂しそう。






人生で今が一番、緊張をしているかもしれない。








たかが十年ちょい生きているだけの自分でも、そう言えるくらい。









ため息をついた反動で足元を見降ろすと、それは頼りなく震えていて、ゆるゆると座り込んだ。












……情けな。








顔が熱い。









きっと今、俺の顔は朱に染まっているんだろう。






触れた指先から感じる熱に、そんなことを考える。






鞠姉を待たせるわけにはいかない。







この分厚い扉を一つ隔てたところで、鞠姉は待っている。








数歩分、勇気を振り絞れば届く距離。






それが果てしなく遠い。