口元が緩みそうになるのをぐっと堪えて。






「……っ島津くんのくせに、かっこつけすぎ」



「えぇ……ご、ごめん」



「……だけど」



「え?」





「私……島津くんのこと、嫌いじゃないよ」





「……!」






これは、あの時の返事。









『真見さん、俺のこと嫌いでしょ』



『……嫌いじゃないよ。好きでもないけど』






……ごめん、あれ、嘘になっちゃった。










今度は私が、島津くんの頬を両手で包んで、にっと笑いかけた。








泣き笑いで、ぐちゃぐちゃで、みっともないけど、少しでもこの気持ちを届けたくて。









「かなり、好き」



「~っ⁉」









ようやく、この気持ちを受け入れられた。

















私は、島津くんが好きなんだ。









島津くんのそばで自然にいられるのも、安心するのも









一緒にいて楽しいのも















全部、好きだから。






あんなに怖がっていたのに、切り替えが早すぎて、自分でも笑っちゃう。









ぼわっと一気に赤面したその額をコツっと突く。








「間抜け面」



「だっ……だって!! 真見さんが……す、すすす……っ」



「すす?」



「好きとかっ、簡単に言っちゃいけません!」



「あ~その決まりのせいでいまだに鞠亜さんに告白できてないもんね」




「う、うぅ~! さ、真見さぁん……さっきまでのしおらしさは何処に……?」



「あはは」






楽しくて、気が付けば口角が上がって、自然に笑えている。








それもこれも、全部。










「島津くんのおかげだよ」









この夏のことを、私はいつまでも忘れられないだろう。






私が、救われた今日のことを。

















はじめまして、私の初恋。









そして……さようなら。