島津くんしっかりしてください

「……っ」



「ママっ⁉」









ふるりと震えた、まつ毛。





少しずつ、瞳が開かれる。










「ママ……っ大丈夫⁉」



「……ぁ」









潤んで、夢見心地な瞳に、私の姿が反射する。






必死で声をかける私に、ママは微かに目を見開いて。






それから、手を伸ばして、私に触れた。











「ぁ、なた……」



「え?」
















「あなた、が……憎い」
















「……ぇ」






鈍器で頭を殴打されたかのような、衝撃だった。






ママ……? 何を、言っているの?






私が、憎い?






ママは……誰を見ているの?






「もし私が死んだら……どんな手を使っても、あんただけは道連れにしてやるから……」






そう言ってママは微かに唇の端を持ち上げて、笑った。






掠れ交じりに吐き出された、弱々しい呪詛。






黒く濁った瞳の奥に、ぞっとするような怒りが見え隠れする。






ママの瞳は、確かに私を見ていた。






正確には、『私から感じるパパの面影』を、見ていた。






それしか、ママの目には映っていなかった。






私は、ようやく理解した。












私は……ママにとって、あいつと自分の繋がりを肯定する、鎖でしかなかったことに。









この勝色も、黒も、私の娘であり、あいつとの娘であるという、証明で。






私が、自分の容姿を嫌悪するようになったのは、この日からだった。






それからしばらくして、ママとパパは離婚をした。






知ってしまった私は、ママについて行きたいなど、言えるはずがなかった。