島津くんしっかりしてください

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自分が嫌い。


そう、はっきりと認識したのはあの時だ。










私には、母親が2人存在する。




一人は今のお母さん。









もう一人は……私を生んでくれた、ママ。















『誠、絵本読んであげよっか?』



眠れないと夜部屋に押し掛けたとき、特別ねと言ってホットミルクを作ってくれたママの悪戯っぽい笑顔。















『まこちゃーん? 機嫌直してよ~』



些細なことで喧嘩して、必死に謝ってくるママの姿。












目を閉じれば今だって鮮明に、その笑顔を思い出すことが出来る。












あの頃の記憶は、いつだって暖かくて。



お日様の香りで満たされていた。












私はいつも笑顔で、明るくて、少しお茶目で。



それでいて、優しい。


ママのことが大好きだった。
















パパはあまり帰ってこないけど、私はママが入ればそれで十分で。







ママが愛している人にそっくりなこの容姿も、すごく好きだった。





勝色の瞳、艶やかな黒髪。





顔の造形、冷静で落ち着いた性格さえも私はパパにそっくりで、外を歩くたび、パパにそっくりねなんて言われるたびに、心の奥にある自尊心が満たされていく。






風に煽られて広がるロングヘアは、私の自慢で、宝物だった。














でも、ママは生まれつき体が弱くて。




それに、心労が祟って、ついにママは倒れてしまった。















家にほとんど帰ってこないパパは、外で浮気をしていたということを、それで初めて知った。







ストレスを隠し続けて無理をしていたママの身体は、とっくにボロボロだった。













救急車で運ばれた、ママ。




処置を終えてもママは目を覚まさなかった。







病室のベッドに横たわり腕に点滴の針を刺したママの姿。





記憶の中のママはいつも元気そうで、明るくて……こんなにも弱っている姿は見たことが無くて、らしくもなく気が動転してしまう。