「まこちゃーん! はやくっはーやーくっ!」



「琴音、そんなに急いだら転んじゃうよ。手繋ごう」






ぱたぱたと駆け出して急かす琴音に苦笑いをして、手を差し伸べる。









現在の時刻は午後5時45分。




私は琴音を連れて、夏祭りの待ち合わせ場所へと向かっていた。






琴音は洋子さんに浴衣を着つけてもらって、ご機嫌な様子。






淡いピンク色で、紫陽花の柄がとてもかわいい。




洋子さん曰く、これは島津くんのお姉さんが小さい頃に着ていたものらしい。







『もうどうせ着ないし、この浴衣も琴音ちゃんに来てもらえるなんて幸せに違いないわ~!』



なんて言っていたけど、また借りが増えちゃったかな……。






小さくため息をついたその時、前方に鹿島先輩が見えて。






周りにはもうみんな揃っている。






「ごめんなさい。遅れちゃいました?」



「いや、全然。むしろ俺たちが早かっただけだしね」






優等生スマイルで返す先輩の後ろから、後輩くんがぴょこっと顔を出した。






「うわ、その子先輩の妹さんっすか? めちゃくちゃかわいいじゃないすか!」






その大きな声に琴音はきょとんとして、それからにぱ、と顔全体で笑いかけた。






「はじめまして! まこちゃんの妹の、さねみことねですっ」






上を見上げるのが辛そうだったので抱っこをすると、琴音は嬉しそうに首元に抱き着いてくる。






その様子を見て、また一つ大きな歓声が上がった。






「まこちゃん、だってー!」



「かわいい~お姉ちゃんのこと大好きなんだねぇ」



「真見先輩がお姉ちゃんなんて羨ましいわ~」






口々に言われて、私は苦笑いを浮かべた。






「あはは、うん。妹家に置いておくの心配だったから、連れてきちゃったんだけど、大丈夫だったかな?」




「全然大丈夫だよ。びっくりしたけど」