「もしかして、あの人に会った……?」



「……はは。せーかい」






なんでわかっちゃうのかな。



……幼馴染って。






「よくわかったね」



「うん。だって誠と島津くん明らかにギスギスしてるんだもん。誠もあの時の雰囲気に近いし」





ヤな感じ~と肩をすくめる加奈子。






「……そんなにわかりやすかったかな」



「わかるよ~だって誠、隠し事するときは優等生スマイルになるんだもん。いつもの投げやりな態度と差がすごくて」




「……あはは」







確かに、そういう傾向はあるかもしれない。






乾いた笑みを漏らすと、加奈子はまた真面目な顔をして。






「誠。あのさ……こんなこと、私が言ったらだめなんだって、わかってるんだけど……」



「んー?」






くるくると、ストローでレモンティーをかき混ぜる。






飲む気になれなくて放っておいたせいか、グラスの周りにはふつふつと液体が浮かんでは、滑り落ちる。




雫が光を反射して、机に波紋を描く。






「自分の気持ちに気が付かないふりをして、誤魔化すのはだめだからね」



「……」






加奈子の笑顔に手が止まった。






からん、と音をたてて、氷が砕ける。






「……えーと」






困ったように眉を寄せて、少し顔を傾ける。






その拍子に、さらり、と髪が肩から滑り落ちた。






「何の話をしているのか、よくわからないんだけど」



「……」






真意を探ろうとする、加奈子の瞳。






私はにこりと笑って、それをかわした。






ごめんね、加奈子。






『隠し事をしていること』を隠すのは苦手でも、『心を読ませない』ことは私の得意技なんだ。