「……理解しかねるな」



「……」






眉間のしわを深くし、地面に視線を落とす彼。






「……お邪魔しました」






吐き捨てるように言って、家を飛び出す。






……気持ち、悪い……気持ち悪い……!






腕には血がにじんでいて、風に吹かれるたびにピリピリと傷が主張をする。










でも、そんなこと気にならないほどの不快感。






それから一刻も早く逃げたくて。






気が付けば、知らない場所に、一人。






……ここ、どこなんだろう。






わからない。公園……?






荒い息を繰り返し、ブランコに腰掛けた。






辺りに静まり返っていて、どくどくどくと波打つ心拍が、耳の奥で響く。






「……っ、く、ぅ……っぅ、う……」






嗚咽が漏れて、口元を押さえた。






そうでもしないと、自分への恨み言があふれて、止まらなくなりそうだった。












私は、あいつが嫌いだ。


存在も、あいつを取り巻くものも。






あいつを構成する全てのものが嫌いだ。













……私は、私自身が、嫌いだ。

大嫌いだ。





この容姿も、性格も、存在も……。






全てがあの男を肯定する要素で。






殺してしまいたいくらいに、憎い。









『誠ちゃんはまだまだ若いんだし、自分で考えるのもいいと思うよ~』



……鹿島先輩。






……やっぱり私に恋はいらない。






そんな感情は、私にとって恐怖以外の何物でもないから。







……だけど。



目を閉じて浮かぶのは、島津くんの姿で。




……私には、眩しすぎる。











私は……どうするべきなのだろうか。






自分が何をしたいのか、何を考えているのか。






何もわからない、何も、わかりたくない。






心に刺さった棘を、無視した代償に。









どくどくと溢れ出す毒に犯されて、囚われて、もう、何も感じない。






……私は、誰だ。