電車で数分。






隣町で降りて、それから数十分。






来るのは久しぶりだけど、道筋はしっかりと記憶していたようで、よかった。








着いたのは、一軒家。






クリーム色の壁に、赤い屋根。




どこかヨーロッパ風なその風貌。

















……私が世界一大好きで、世界一嫌いな場所。






ポケットから鍵を取り出して、ドアの鍵穴に差し込む。









ガチャリ









何の引っ掛かりも感じず、問題なく開いた。






私は玄関のドアノブに触れ……息を吐いて、一思いに開いた。






ふわりと、香る。






柔らかな日の香り、少し埃っぽいけどそれは、記憶と一寸違わぬもので。






目元が熱を持って、震える唇を噛み締めた。






……あぁ、すごく、安心する。






何も変わってないな。






あれから二年もたつのに。






あいつは……相変わらず、あまり帰ってきてないんだろう。











……それじゃあ、あの部屋は?






ふらふらと誘われるように、2階へと向かう。






階段を登った、2階の一番奥の部屋。






ダークオークの扉に、金色の繊細なつくりのドアノブ。






ゆっくりとそれをまわすと、かちゃりと軽い音がして、開いていく。






アンティーク調の机、クイーンサイズのベッド。






飾ってある花まで造花なこともあり、あの頃から時間が止まっているかのようだ。






カーテンから差し込む光に照らされて、埃の粒が煌めく。






私はそれをしばらく呆然と見た後、ゆるゆるとしゃがみ込んだ。