島津くんしっかりしてください

その無口さは資料室に着いてからも相変わらずで。






それでも作業する手は止まっていなかったので、私も会話を諦めて黙々と手を動かした。








えっと、これは……うわ、上の方だ。届くかな。






試しに背伸びをしてみるも、ギリギリ届くか届かないかの瀬戸際だ。






何で脚立ないの……。こんなの女性の先生とか上のもの何にも取れないでしょ。





心の中で悪態をついても仕方がないので、はあ、と大きなため息を一つつき、再度挑戦してみる。





あと……もう、ちょっと……。







でもそのちょっとが届かなくてもどかしい。






あー腕、疲れてきた。もう諦めてその辺に置いておこうかな。






そう思った瞬間、後ろからひょいとファイルを取り上げられた。







「……えっ」







びっくりして後ろを振り返ると、島津くんが無表情のままこちらを見降ろしていて。







「……上の方のやつ、俺がやるから」



「あ、え……うん。ありがと……」






そう返事を返すと島津くんは軽く頷いて、作業へと戻る。






びっ……くりした。島津くん、喋れるんだ。






いや、まあうん。助かったけど、島津くんが喋ったことが衝撃的過ぎて。






危うくお礼をいうのを忘れるところだった。





てっきり頷くことでしかコミュニケーションをとれないのかと……。