「そっか。じゃあお言葉に甘えて・・・。」

そう言って手を出すと手のひらに栞を乗せてくれる。見れば見るほどとても綺麗だった。高島さんと彼女の家族の心もこんな風に透き通っているのではないだろうか、なんて思った。

「ありがとう。本に挟むのが楽しみだよ。」

「よかった。」

微笑み合ってバスに向かった。私の隣を高島さんが歩いている、ということがなんだか嬉しかった。今までは隣にいても私達の間には何もなかったのに、今はかすかな何かがあるように感じる。顕微鏡のプレパラートを作る時試料に乗せるカバーガラスのように薄い何かだけれどそれは確かに存在している。

きっとあの栞を本に挟む度、栞が素敵なことに加えて今日のことを思い出して嬉しくなれるのだろう。私にとって心のサプリのような存在である本が更に栄養分を増すように思った。