───修学旅行の班決めってどうしてくじ引きじゃないんだろ?

梅雨のじめじめが教室内にたちこめる6時間目のホームルーム。窓の外の空は今にも落ちてきそうな重たい雲がどんよりと覆っているのに、教室内は色々な色形のお菓子が並ぶキャンディショップのように華やかだ。床や机の木材が湿気を含んだ匂いがしているはずなのに、なんだか甘い香りがするような気がしてしまう。

私、日下部陽南(くさかべひなみ)は教壇の目の前の席で机に突っ伏しながらクラスメイト達のポップなざわめきを耳にしていた。彼らの声は私の耳の中に入ってきては街中の雑音のように何の意味もなさずに通り過ぎていく。

目の前にある机の天板には前の使用者が開けたであろう穴が3つ開いていてハニワの顔みたいだと思った。そちらの方が私にとっては意味があることだった。何を使って穴を開けたのか。一体どんな想いで開けたのか。何かのメッセージが含まれているのか。私も後の使用者に向けて何か残してみようか。

ちなみに授業中はこんな風に突っ伏したりせずきちんと先生の話を聞いてノートをとっている私である。