見上げると佐原くんが立ち上がってカーテンを閉めていた。

「寝るのに眩しいかと思って。」

私と目が合うと彼はそっけなく言った。真下から人の顔を見るのってなんだか変な感じだ。鼻の穴の中がしっかり見えてしまい慌てて目を逸らす。

「あ、あの閉めたら景色見えなくなっちゃうけどいいの?」

「本読むし。」

自席に戻った佐原くんは言いながらコンパクトなリュックから分厚いハードカバー本を取り出した。しかも数冊入っているようだ。

リュックの容量に対して本が占める割合が大き過ぎて他の持ち物はちゃんと入っているのだろうか、などと心配になってしまう。

私も本は大好きだし修学旅行中暇な時間が多いだろうから読書タイムに出来るけれどさすがに持ってこなかった。何か返さなきゃと思って口を開く。