これは、あれじゃない?私の両親が私に何も言わなかったんじゃなくて、最上くんが誰にも何も言わずに勝手に引っ越してきたんじゃない?
「今日両親いなくてよかったね。きっと追い返されてたよ」
「なんで?来いって言ったのはそっちだろ」
「遊びに来いと引っ越して来い、って意味が違うのわかる?」
まあ、もうすみ着いちゃったもんは仕方ないし、両親もきっと許してくれると思う。
「ウチの両親、緩いから」
「だろーな。お前が羨ましいわ」
「……」
最上くんはサラッと言ったけど、その言葉の裏に何かが隠れているようで……。
でも、きっと素直には教えてくれないだろうな。
「ねえ、最上くん。下の名前で呼んでいい?」
「好きにしろよ。俺も鈴木ばかりでややこしいから、春陽って呼ぶわ」
「よ、よろしく……がっくん」
「がっくん……」
私は自分の名前を呼ばれて照れて俯き、がっくんはまるで幼稚園生が呼ばれるようなニックネームを名付けられて落ち込んで俯いた。



