「ねぇ、最上くんのお父さんお母さんは、最上くんがこの家にいることを知っているの?」
「知るわけねーだろ」
「じゃあウチが誘拐犯みたいじゃん」
やめてよ、連絡してよ。ウチの両親も、こんな非現実的なこと許さないでよ。
「何から荷ほどきするかなー」
県外の大学に通っている兄の部屋の中で、既に生まれた時から住んでいるような馴染み方をしている最上くん。
少し猫っ毛の髪が邪魔なのか、大きなピンでパチンと邪魔な髪を止めた。だけど、止め方が雑すぎてすぐに髪が落ちてくる。
「ねえ、髪、止めようか?」
「出来んの?」
「そこそこには」
ウソ、本当は全くできない。
でも、あの最上くんの髪の毛だよ?触れるんだよ?
こんな機会逃したら、一生後悔すると思う。



