「し、知らなかったよ……どういうことなの?」

「お前の親がお前に何も言ってねーのが信じられねーよ」



最上くんの荷物が続々と部屋に運ばれている光景を目の前に、引っ越し屋さんの邪魔にならないように部屋の端っこで待機している私と最上くん。



「そもそも、どうして同居なの?」



私こと鈴木春陽(すずきはるひ)は、終始ポカンとした表情で、最上くんに説明をお願いした。
すると、最上くんから帰ってきた答えは一言のみだった。



「家出」

「へぇ、そう。家出……家出ぇ!?」



大きな声に、一瞬にして作業員さんがこちらを見る。

いや、あの、すみません――そう言って、私はお辞儀を繰り返した。