「もっとこっち寄れば?」
「いや、遠慮しとくね」
「……お前、俺が傷つかないとでも思ってんの」
「ふふ」
思ってないよ、傷つかない子なら、家出なんてしない。
思わず出そうになったところを、あと少しのところで呑み込む。
「笑うな、くすぐるぞ」
「ひゃ、くすぐったいからやめてー」
がっくんが私に、自衛として私ががっくんに――そうしてお互いくすぐりあっていると、いつの間にか二人の距離がすごく近いことに気づいた。
「なあ春陽」
「ん?」
「抱きしめていいか」
「うん……いいよ」
がっくんの太い腕が私の背中に回る。がっくんの息遣いが、私の頭上でする。
足の行き場をなくしていると、がっくんの足の間で挟まれた。かなりの密着。
二人の距離は、もうゼロ――



