岳斗くんと過ごした甘い夜 (短)



「がっくんはさ、」

「うん」

「……やっぱ何でもない」



不思議がる私に、がっくんは首を傾げた。

本当はね、聞きたかった。

がっくん、夜な夜な家を飛び出して何をしてたの?どうして家にいたくないの?――って。

でも、それは聞いちゃいけない気がした。

すると、私の言いたいことをくみ取ったようながっくん。

今度は私の手を握って、ギュッて離れないように握って、こう言った。



「春陽は何も聞かないから、一緒にいて楽だな」

「そ、そう……?」



嬉しかった半面、悲しかった。

これ以上こっちにくんなって、線を引かれたみたいで。

がっくん、いつか話してくれるの?

いつか本当に、あなたが家に自分から帰りたくなる日は来るの?