エレベーターから始まる恋


お会計は全て郡司さんが済ませてくれた。
"会計別々で"という流れになると思い財布を出して順番を待っていたところ、伝票を持っていた郡司さんが全て払っていた。

お店を出て自分の食事代を彼に突きつけたが、頑なに受け取ろうとはしなかった。
人目もあり、そこは素直にお礼を言った。

「いつも電車で来てるの?」

「はい。ここから40分くらいです。郡司さんは?」

「俺は基本的に電車だけど、たまに車も」

そっか。確かミチコさん…鈴木さんに"帰り車で送る"って電話で話していたっけ。

微妙な距離感を保ちながら、並んで駅に向かっていた。
しばらく沈黙が続く。駅が近づき、電車の音や構内アナウンスが聞こえるようになってきた。

「あのさ、よかったらまた食事にでも」

その言葉に驚き顔を上げると、一瞬目があたったもののすぐに逸された。
表情は見えないが、耳がほんのり赤くなっている。

郡司さん…照れてる?

「はい、是非」

そう答えると、やっとこちらを向いてくれた。
そして、そっと手を握られる。
驚きつつも、初めて彼に触れることができ、その温もりを感じられ胸がいっぱいになった。