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扉には「close」の看板が掛けてあったが、鍵は掛かっていなかった。
電話で言われた通り鍵の掛かっていない扉を押すと、厨房前のカウンター席に風音君が座っていた。
「すみません。バッグ取りに来ました。」
「鈴さん、早かったですね。」
「ええ、私のせいで帰れないんじゃないかと思って…急いで来ました…」
「そんな、気にしないで下さい。」
「いえ、ただでさえご迷惑をお掛けしてますから。」
「もし良かったら、何か飲みますか?そんなに急がれたなら喉、渇いたでしょ?アイスコーヒーかミネラルウォーターなら直ぐにお出し出来ますよ?」
その申し出は有難かった。
走ってきて、喉はからからだったから帰りに飲み物を買おうと思っていたところだ。
「じゃあ、ミネラルウォーターをいただけますか?」
「はい、直ぐお持ちしますから、ソファーにお掛けになってて下さい。」



