麦は周りを見渡して誰も使っていないことを確認した。




「あの、あちらの席空いていますよ」




麦は近くで立っていたおばあさんに声をかけた。




「あら、ありがとう」
おばあさんはにっこりと笑って麦にお礼を言った。




麦も思わず口角が緩んだ。



一日一善。



誰かにした優しさは自分に返ってくるから、嫌なことも頑張るという気持ちで麦が大切にしている習慣であった。



ちらほらと別の高校の人やサラリーマンが降りて行き、席が空いて麦も座ることができるようになった。




麦は先に着くと「5分だけ…」と言う気持ちが芽生えウトウトした。




やがて夢を見始めた。




夢の中でいるかが呟いた。




「素敵な人と出会えるよ」