私を見て、私を愛して

「わかってるよ。」

「わかってないよ！雄介さんは離婚するつもりなんて、これっぽっちもないし、もしものときは京香のこと切り捨てるよ。」

「……わかってるよ。」

ゆか子はショッピングモールで雄介を見たとき、幸せそうな家族だと思った。

だから雄介が離婚するなんて考えられなかった。

本当に幸せそうな顔をしていたのだ。

「最初は知らなかったんだよ。指輪も会社ではしてなかったし、部署も違うから既婚者だとか、そういう話も聞いたことがなくて……」

一度言葉を切った京香は、迷子になった子どものような不安そうな顔をしている。

「でも、付き合い始めてから平日しか会えないのっておかしいなと思うようになって、思い切って聞いてみたの。そしたら、私が……雄介さんが既婚者だってこと、わかってて付き合ってると思ってたって……」

「別れようって思ったことは一度もなかったの？」

「……なかったわけじゃないよ。でも離れられなかったの。」

京香の表情はどんよりと曇っていて、いまにも泣いてしまいそうだった。