私を見て、私を愛して

メガネ姿もスウェット姿も同様だ。

そういう姿を晒すことに恥じらいがあった。

しかし、今ではすっかりその恥じらいが失われてしまっている。

このままではいけない。

新婚当初の気持ちを、恥じらいを取り戻すために自宅でも美しくあらねばならない。

そういうわけで行動に移したゆか子だったが、着飾ってみると思いのほか気分が良かった。

花柄のワンピースを纏ったゆか子は、貴婦人の気分だ。

見た目を綺麗にすると、行動まで綺麗になるようだ。

(見た目を綺麗にすることも大切かもしれない。自分のためにも、洋樹さんに女として見てもらうためにも。)

「よし、大丈夫!」

外見を整え、いつもより少しばかり優雅な気持ちになったゆか子は、自信が出てきた。

もう一度だけ鏡の前で一回転し、おかしなところがないか確認をした。

「おかしくない。大丈夫!」

いつもとこんなにも違うのだ。

これならばきっと洋樹も何か言ってくれるはずだ。

はやる気持ちを抑えてリビングに繋がる扉を開けた。