私を見て、私を愛して

「でも子どもが生まれても変わらないでいるなんて無理だよ。子どもが生まれたら子どもが一番になるでしょ。」

母親になった今、ゆか子にとっての一番はもちろん友也だ。

「そうね。子どもが生まれて変わることは全く不思議なことじゃない。母親になるから変わらないと子どもを守れない。問題なのは洋樹さんが変わってないことよ。」

「どうしたらいいの?」

「どうしようもないんじゃない?すぐにどうにかあるものじゃないし。人はそんなにすぐ変わらないわよ。」

「そんな……」

ゆか子は困り果てて、口をつぐんだ。

京香がそれを見て、空気を変えるように言った。

「他の悩みを解決してみたら?何か1個がうまくいけば、他のこともうまくいくことがあるよ。それに他が満たされたら、家事とか育児とかのことが気にならなくなるかもよ。他の悩みはないの?」

「そうだね……」

京香の言葉に納得したが、ゆか子はもう一つの悩みをなかなか口に出せない。悩みというよりは願いというべきかもしれない。

「そうだよね、え、っと……私は……愛されたい……」

「だったら不倫しちゃいなさい。」

やっとの思いで口に出した願いを聞いた京香は、キッパリと言った。