私を見て、私を愛して

「魚見ての感想なんて、美味しそうか美味しそうじゃないかでしょ。」

洋樹はそう言って笑う。

「なにそれー、ひどいよ。」

そんなくだらない会話をしながら、ゆっくりと先へ進む。

トンネルを抜けると、目の前に巨大水槽が現れた。

ゆか子の身長の3倍以上の大きさはある。

水族館の中は、深海のように深い青色や紫色にライトアップされていて、大人が訪れても楽しめるような幻想的なムードが漂っている。

ゆか子は、視界を覆い尽くす深海のように幻想的な美しさに見惚れた。

熱に浮かされたように、ぼぅっとその空間に佇んでしまったゆか子の肩に、誰かの肩が当たった。

その衝撃にゆか子は現実に戻されて、ハッとする。咄嗟に謝罪の言葉を口にした。

「すみません。」

幸いタチの悪い相手ではなかったため、怒鳴られるようなことはなかった。

何度も謝ってから、ゆっくりと先に進む。

そして今度は水族館の雰囲気や魚見惚れていても大丈夫なように、洋樹のポロシャツの裾をちょこんと握った。

ポロシャツを掴まれる感覚がして不思議に思ったのだろう。

洋樹が首だけ振り返って、クスッと笑った。