処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。

帰り道も、まだ探したいという気持ちは萎まない。

諦め悪く、もしかしたら、このあたりにあるかもしれないなどと、そんな気持ちでキョロキョロ視線を彷徨わせながらの帰路だった。

そんなことをしていたものだから、木の根っこに足をひっかけて転んだり、沼に落ちそうになったり、みんなから逸れそうになったりと、小さなミスをたくさんした。

結局、日暮れにはギリギリ間に合わず、野営は当初の予定していた位置より随分と手前となった。
予定の半分も進んでいない。

暗がりでの食事や野営の準備となってしまい、ここでもみんなに迷惑をかけた。
文句を言っていた若い男の子は、不満げに作業していた。

夕食はまた鍋となる。
葉物とキノコ類はそれなりに集められたが、獣を狩る時間は無く、昨夜より質素になった。たくさん体を動かした働き盛りの男にはちょっと物足りなく、それがさらに不満を募らせた。

みんなが寝静まった夜、みんなに申し訳ない気持ちもちゃんとあって、悶々としながらテント内で休んでいると、火の番を終えたカウルがやって来た。

「カウル。お疲れ様」

起こさないようにと気づかって、そっと入ってきたカウルは、声をかけると驚いた顔をした。

「ゆづか、まだ寝ていなかったのか。どうした? 傷が痛むのか?」

「ち、違うよ。傷は全然大丈夫」

心配した顔が迫った。

転んだ時に傷口を舐められたのを思い出し、お腹の奥をぞくっとさせた。
帰り道、木の根っこに足をひっかけて、スライディングするように転んだ。
膝に擦り傷と、腿の内側に切り傷を作った。

消毒だと言って皮膚を吸われ、膝からだんだん這い上がってくる舌の感触に、「ふぁっ」と、変な声がでてしまったのは一生の不覚。

その後の、みんなの視線と気まずさと言ったら。

カウルはカウルで、「こら、逃げるな。消毒はきちんとしておかないと」などとクソ真面目に語る始末で、自分ばかりが意識しているのがなんとも滑稽であった。