あの日食べ損ねたササミフライを、未だわたしは渇望している。
でも、その願いは少し変わった。
今の願いは、白い米とササミフライをみんなで一緒に食べることだ。

それには卵も、一度にもっとたくさん取れるようにしなくてはならない。
あの日の夕食を再現するには、もっともっとがんばらなくては……!


「おい、ゆづか。今日は森に山菜を取りにいくんだろ。片付けが終わったらすぐ出発でいいのか?」

鼻歌を歌いながら朝食の食器を片付けていると、料理長のプーリーが声を掛けてきた。

「うん。お願いします。あー楽しみ!! 何があるのかな。ワクワクするね」

料理に関する情報交換で、プーリーとは切磋琢磨しあえる存在となっていた。
パイナップル頭のプーリーは、見た目はヤクザでガラの悪いおっさんだが、実は豪快で気さくなおじ様だ。日本で言うと、食堂のおっちゃん、って感じだ。料理と食事に対する、わたしの熱い気持ちをわかってくれる、マブダチとなってくれた。

食品の加工の知識はわたしのほうがあるが、素材の種類や、それを手に入れる方法は、やはりプーリーの方がよく知っている。
一緒に出掛け、調理方法や味を議論しながら食材を集める。見たことのない木の実や植物を教えてもらうのは、楽しくて仕方がなかった。

今日は、待ちに待った遠征日であった。
城から少し遠い距離にある森へ行くことになっている。

森の奥までいくと、珍しいハーブやきのこなどが採取できるらしいのだが、敵国のデリンクエンツとの国境が近く、さらには森は迷いやすく、獣もいるのでなかなか行かせて貰える機会がなかった。

危ない場所だから、欲しい食材があるなら取ってくるとカウルは言ってくれたが、それではわたしは面白くない。

頼みに頼んで、土下座をかまして勝ち取った行程であった。