処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。

この世界では、保存が利くように堅めに焼いたパンを、スープやミルクに浸して食べるのが主流であった。
どうしても柔らかいパンが食べたいとわがままを言い、今朝はわたしがコッペパンを焼かせてもらったのだ。

早朝からパンを焼く匂いは城中に広がり、寝起きの胃袋を刺激した。
出来栄えは大成功で、こんなふわふわなパンを食べたことはないと大好評だった。
フェンには今度こそ食べて欲しくてリベンジとなる。


具材は卵。卵は1つしか使えなかったから、細かく刻んだキャベツとキュウリでかさ増しし、マヨネーズも手作りとなる。
マヨネーズにも卵を使ったらプーリーに怒られてしまったのだが、卵サンドイッチを試食させたら「ぐぅ」と唸り許してくれた。

「こんなに美味いと文句も言えん」といわれ、わたしは破顔した。

そんな経緯があり、わたしはずいっとフェンにサンドイッチを突き出した。


「いらねぇよ」

「でも、お腹空いてるよね。フェンがリアをどうしても許せないのはわかるの。でも、食べないと元気が出ないし、倒れちゃうよ」


何を話しかけても返事をしてくれないフェンに、「どうしたら別人だって認めてもらえるのかな」とサンドイッチを見つめながら呟いた。


「もうその顔が気に食わないんだよ。金の髪を自慢げに靡かせて、俺の妹を侮辱したのを一生忘れはしないからな。今思い出しても腹が立つ」