ラジがブォンブォンブォンと何度もエンジンをふかすと、闘技場だか処刑場だかわからないその場は、熱狂に包まれた。


スポーツ観戦じゃないんだぞ。
女の子がバイクに引き摺られそうになってんのを、誰も止めずに喜んでるってどういう状況?! リアって人はどれだけ悪いことしたのよ。

っていうか、わたしはなんでこんなピンチな瞬間にこの子になってるんだろう。
入れ替わり? 転生? 
転生ならせめて、赤ん坊からやり直させてくれればいいのに!


「やっやめて!! ほんとにわたしリアじゃないの! 人違い! なんにもわかんないんだってば!」


必死に叫んでも誰も聞いてくれなかった。
カウルだけが、騒がずにじっとわたしを観察していた。

「そ、そうだ、わたしが別人だって証明してみせます! 制裁は別の形で受け入れるから、痛いのはやめて!!」

「別人と証明するだと? どうやってだ。記憶が無いフリをすればいいだけじゃないのか」

フェンが鼻で笑った。
わたしが喚いてる間も、じりじりとバイクが進み縄のたわみがなくなってくる。やばい。マジで死ぬ。
えん罪は勘弁です。


「あっ、え、ええと、そうだ、奉仕をします! 迷惑をかけていた国と皆さんに! 城と国の為に一生懸命働きます!!」

喋っている時にすざっと足を引かれて顎を強打し、お腹を擦った。
脳みそが揺れて、眩暈がした。


ぎゃはははと笑われる。
嘲笑う群衆が霞む視界に映った。

悲鳴は声にならなかった。喉が引き攣って、へんなうめき声だけがでた。

本気でやばい。すでにめちゃくちゃ痛い。