処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。


「お前は悪いことをしたわけじゃない。だから元気をだせ、ゆづか」


慰められると余計に申し訳なくなった。

早くこのノーティ・ワンに、安定した収穫と食事が出来るようなシステムを作りたいという思いは確かにある。けれど、今日のわたしは、ただ私欲の為だった。

お米を食べたい。
みんなにお米を紹介して、びっくりさせたい。
みんなに稲の普及を見せて、ありがとうと感謝されたい。褒められたい。
そんな邪な思いしか抱えていない。


「元気だしっ」

複雑な気持ちで口を尖らせながら言うと、今度はほっぺたを摘まんで伸ばされた。


「っな、なにしゅるっ……」

頬が変な形になり舌っ足らずな喋り方になる。
頬が痛い。カウルの力は強すぎるんだ。


「ゆづかの元気がないと、俺も悲しくなるぞ」

カウルは物凄く恥ずかしいセリフを、大真面目に吐いた。


「明日笑えるように、頬をほぐしておいてやろう」

カウルの両手で挟まれた頬が、餅のようにこねくり回された。


「子供じゃないんだから」

「リアは子供だよ」


本当はわたしの方が、カウルより年上なんだけどなあ。
むにむにと揉まれながら、カウルを見上げる。

昔読んだ少女マンガに、こういうヒーローいたなぁ。
無意識に、周囲の女子がときめくようなことをやってのける男。
手のひらは、竹刀ダコみたいなまめと硬い皮膚で強ついていた。
マッサージは特段気持ちよくはなかったが、カウルの熱を感じるのは、嫌ではなかった。