処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。

「あの、今日はごめんね。明日はちゃんと言うこと聞いて大人しくしてるね」

出発が遅れたのも、その途中途中のトラブルで足止めが多かったのもわたしが原因だった。


「そうだな。明日は頼む。
今はチームで動いていて、みんなで1つの仕事をこなしている。一人一人の意見は勿論大事だ。けれど、勝手な振る舞いをしていいわけじゃない。意識を1つにして行動しないと、事故が起こる。何かあったら、命に関わることもある。ゆづかにも、それは常に分かっていてもらわないといけないことだ」


カウルはそんなことないなどという、適当な慰めはしなかった。そういうところが、男らしくてぐっときたりする。

この世界に来てからこれまで、城の仕事も畑仕事も料理も、全部一人ではなかった。
全てはみんなと協力して行っていたことを思いだす。

一人で楽しく気ままに生きていればいい。誰にも迷惑かけてないなんていうのは、ここでは通用しないのだ。


「そうだね、ごめんね……」

しゅんとすると、カウルが鼻を摘まんだ。


「ふぬっ」

びっくりして声を上げると、カウルは笑う。


「気にすることない。確かに困りはしたが、ゆづかの我が儘は、国を思ってでの事だとみんなわかってる」

細められた瞳の柔らかさに、胸が急にぎゅわんとした。


――――う。……そ、その笑顔反則だし。


カウルは無邪気なところがあるのが困りものだ。
厳ついながらも容姿が整っているのはわかっていたが、最近は変なフィルターがかかって、やけにキラキラと輝いて見える。

笑みを向けられたりすると全身をムズムズした何かが駆け巡って、走り出したくなる。
それはいままで経験したことない感覚で、なんだか恥ずかしいから嫌だった。