私は今、都内の大型書店に用意された
仰々しいサイン会場に座っている

緊張でため息が止まらない

昨日はサインの練習をしすぎて手が痛いし
緊張で眠れず、肌のコンディションが悪い


私が書いたKPOPスターとの恋愛の本が
少し話題になりあれやこれやと
業界の人が押しかけて
すごいすごいと囃し立てられ

なぜか今日、この場にいる



ナミは私の理想だ
多分びっくりするぐらい美人で
スタイルも良くて
会社も儲かっている社長

架空の話だから盛りだくさんに
してみたが、
たまに作者にもそれを想像する方が
いらっしゃって…

そういったファンレターを頂くと
心が痛くなる


私は文中でたまに出てくる
平凡な女そのまま

こんな事が自分の身に起こったら
いいのにな
という妄想を書き溜めていたら

いつの間にか小説になってしまった
どちらかというと重症方面のKpopファン


だから皆さんをがっかりさせない為にも
人前には出ないと決めていたのだが
これだけは断りきれなかった


「線にそって並んでください」
「必ずマスクの着用をお願いします」

係員の声が聞こえる

「先生、始めますね?」
編集の方が声をかけにきた

お願いしますといって頭を下げる

一人目の方は多分40代中盤の女性で
興奮ぎみに感想を語ってくれた

本当にありがたい…

練習したサインを披露する


一人目から集中してお話を聞いていたらあっという間に時間が過ぎ最後の人になった

若い男性だ、珍しい

「先生の物語、僕の話かと思いました」

小さな声で離す

日本語だか日本人ではない

顔をあげる

「えっ」

息を呑む

マスクとメガネ、大きめのニット帽
明らかに高級そうな時計と白い半袖ニット

そして優しいカーブの切長の目


彼は韓国語で続けた

「でもTKGはダサ過ぎますよ!
 小説を読んで、どうしてもお会いした
 かったんです」

名刺頂けませんか?

タッカンマリ食べにいきましょう

僕はメールアドレス間違えたりしないですけどね ふふふ


朦朧とした意識の向こう側で
そんな事を言っていた気がした

震える手で
何とか名刺を手渡し

「かむさはむにだ・・・」

震える声で返した

男性はそれを受け取ると
すぐスタッフらしき
人に連れられて
足早にさっていった

時間にして2分くらいだろう



それはまさしく


私の推し、大好きな・・・





その後展開があったのか?

時間があれば書いてみたいと思います。





それでは

本当のおわり


お付き合い頂きありがとうございました。