同じ車両の何列か後ろに彼がいた
変な人がいたらすぐ近くに来るそうだ

車内はガラガラで
その心配はなさそうだが
目を光らせている姿が目に浮かぶ


イヤホンでこっそり話す

「落ち着いた?
 バスケット壊れてない?」

 「落ち着いた。
  大きい声出してごめんね。」

 「バスケットは持ち手を破壊する
  かと思ったけど大丈夫だった」

「両方無事でよかった」


そこからは、今度は映画みたいね、東京のラーメン食べたい、
次の休みいつ頃になる、お互いの仕事のこととか
取り留めのない話をして過ごした

いつの間にか1つ手前の駅に
着いており、急いで準備をして
別のドアから降りる

降り立つと新緑の森があちこちに見えた

都心とは違った澄んだ空気が迎えてくれる

「きもちいい〜」

二人で深呼吸する

「さて 滝までハイキングだね?
 早速いきますか!」

 「えいえいおー!」

朝とは別人みたいに爽やかな笑顔で
拳を振り上げる

私は聞こえてるけど周りからみたら
一人で拳を振り上げるおかしな人だ



目的地に着くと何組かピクニックを
している人がいた

一旦滝の写真は諦め
目立たなそうな場所にシートを
広げ座った

バスケットから色々出していく

「後でお昼を食べると思うから
 簡単なものしか持ってきて
 ないんだけど」

 「なになになに〜なになー
  ににににー楽しみ〜」

頭を振って変な歌を歌ってる


「キンパだよー
 あと卵焼きとウインナー、
 チーズちくわ」

 「わーーー美味しそう!!」


目が輝く


 「こんなに準備して大変だったね!
  早起きしたでしょ。ありがとう」

 「美味しくいただきまーす」

もぐもぐと2回位かんですぐ喋る

  「いやーこれは本当においしいね!
   いつものおにぎりも美味しい
   けどキンパもすごく美味しいよ!
   ナミは天才!」

卵焼きも食べて口の中を
いっぱいにする

 「むーーん んほんほんーむむなむ」

はいはい食べてからしゃべってね

「美味しい?」

 「ちょーおいひー」

「よかった、そうやって食べてる姿は
 普通の人で安心するよ。
 いっぱい食べてね。」

「遠目からみるといつもザ・スター
 だから本当に私の彼氏かなって
 不安になるんだよね」


 「何それ? 僕はいつだって普通の
  28歳だけどね」

 「それに僕だっていつも、
  こんなお子様は愛想つかされる
  んじゃないかって
  ハラハラしてるよ」

「さっきもかなり駄々こねてた
 もんね〜
 あんな事思ってたんだって
 初めて聞いたから驚いた」

 「言うつもりなかったんだよ。
  子供みたいだったね、ごめんね。
  ついかっとなっちゃって、、、
  恥ずかしいよ」


 「でもナミのこと本当に大切に
  思ってる
  ポッケに入れて持ち歩きたいのは
  本当の気持ち」

 「だけどあんまりヤキモチやくと
  嫌われそうだから控えなきゃって
  思ってる」

 「呆れちゃう?」