忙しすぎる…
僕だけでなくナミも海外出張が多く、
あれから3週間会えていない

毎日ビデオ通話かメッセージで
愛を伝え合っているが
そろそろ会いたい

今日はナミが香港か帰ってくる日だ
夜中に到着すると言っていたが、
サプライズで行ってみようか迷っている

会社の人と一緒だろうから迷惑かもしれない 

マルに聞いたら「重い」って言われた
それも率直な感想だな

でもここを逃すと今度は僕が
アメリカに行ってしまうから完全にすれ違い
会いたい気持ちが募る

結局マルに拝み倒して、
空港まで運転してもらった

只今深夜1時
運悪く飛行機が遅れていて
マルは眠い寒いとブツブツ文句を言いつつ
車で待っていてくれる

ナミには言っていない

多分ここから出てくるはずだが…
出待ちのファンの気持ちがわかった
すごいドキドキするんだな

少し遠くから出口を見つめる

扉が開き何人か出てきた

違う

また、、、違う

次に来た男性3人女性1人のグループをマークしていると
振り返った女性がナミだった

久しぶりに見る僕の彼女
深夜フライトで疲れているのだろう、
少し顔色が悪かった

ポニーテールが可愛さを引き立てる
スーツのジャケットの下に柔らかそうな
ニットのセットアップ

周りの男性がしきりに荷物など気を遣っている

 「車寄せますので社長はこちらでお待   ちください」

「もう遅いからタクシーで帰るわ、皆も直 接帰って」

そんな会話が聞こえてきた

気づかれないよう距離を保って動向を見守る

どうやらタクシーまで皆で見送るらしい
まずい!このままだと、声をかけるタイミングがないぞ

ナミが突然立ち止まり声をかけた

「ちょっとお手洗いよってから帰るから
 ここでいいわ」

「どうもありがとう。
 皆さん本当にお疲れさまでした。」

 「わかりました。
  社長も気を付けてお帰りください。
  また明日よろしくお願いします。」

「明日は午後からでいいですからね。
 ゆっくり休んでください。」

 「ありがとうございます。
  失礼します。」

「はーい」

解散して別々の方向に歩く

よかった!もう少ししたら声をかけよう

ナミは他の人が行ったのを確認して、
トイレとは別の方向へ歩いて行った

トイレじゃないのか?

念のため距離を取って歩く
スマホを見ているようだ


突然手元のスマホが震える

ナミからメッセージ

「起きてる?」

すぐに返す

 「起きてるよ。着いたの?」

「うん 電話していい?」

ダッシュで柱の陰まで移動した

 「いいよ」

ナミから着信

「ユジュンさんただいま」

 「おー、お帰り、遅くまでお疲れ様!
  大変だったね。
  仕事はどうだった?」

「うーん、あんまり上手くいかなかったんだよね。
 私の力不足で皆にも迷惑かけちゃった。」

 「そうなんだ、大変だったね…
  まずはおつかれさま」
 「家でゆっくり休まないとね」

「うん」
  
 「今回上手くいかなくても、
  次に上手くいけばそれで
  いいんじゃない?ナミなら大丈夫!」

「・・・」

返事がない

変な事を言ったかと心配になり陰からナミを確認する

俯いて泣いていた
僕に聞こえないように静かに肩を震わせながら

空港のだだっ広い空間にたった1人
こんなに心細い光景を見たことがない

小さな肩に背負った大きなものを想像し胸が痛くなる


 「ナミ…」