気がつくと、喜々良はベッドの中にいた。
心配そうに、梨絵(りえ)が喜々良を見ている。

「あれ…わたし…?」

「佑典から、喜々良が倒れたって連絡があったの。
しかもあんた、熱まで出てるし。
少し寝てなさい」

梨絵はそう言って、部屋を出て行った。

…疲れた。
何も考えたくない。

喜々良は布団を頭まで被ると、目を閉じた…。


‐「うんっ、もう熱も下がったね」

梨絵が、喜々良の額を触りながら言った。

「…わたし、ちょっと出掛けてくる」

「行ってらっしゃい」

台所には佑典がいて、喜々良は走るように玄関に行き、靴を履くと、外に飛び出した。

唖然とする佑典に、

「あらあら、あんたたち、喧嘩でもしたのぉ?」

何も知らない梨絵は、呑気に笑う。