そのドキドキの理由がわからず、喜々良は佑典が帰って来ると、

「ゆうちゃん!」

佑典に駆け寄った。

「ゆうちゃん、笑って」

「は、やだよ。
なんで?」

「いいから笑って」

喜々良がしつこい為、仕方なく笑うと、

「なんか違う⋯」

ため息までついている。

「なんなんだよ、もう!」

思わず怒ってしまう。

「あ、ごめん。
実は今日⋯」

喜々良が今日の出来事を話すと、勘のいい佑典は恋だと気付いた。

だが、それは喜々良が自分で気付くものだと思い、何も言わなかった。

それが恋だと気づいたのは、中学校の卒業式が間近に控えていた頃だった…。

高校は別々のところを受験し、2人とも合格しているから、告白して、振られても気まずくならない。

でも、それってホントウに…?
全く気まずくならないと言えるのだろうか…。

少しでも気まずくなり、2人の関係が壊れてしまう方がつらい。

だから、告白しない。

健悟に書こうとしていた手紙を、机の引き出しにしまった。
その選択が間違っていたと気づくのは、もう少し後の話‐。