‐3月

明日に控えている、卒業式の準備をしながら、喜々良(ききら)はこれで何回目になるかわからない溜め息をつく。

「溜め息ばっかついてると、幸せが逃げるぞ」

コツン、健悟(けんご)が喜々良の頭を小突くが、

「…もう逃げていくもん」

喜々良は浮かない表情を浮かべる。

「そんな寂しいなら、告白すればいいじゃん!」

「は…?」

「だって、寂しいのはゾノがいなくなるからでしょ?
それならゾノに」

「寂しいだけ。
別に好きじゃない」

健悟の言葉を打ち切り、喜々良は作業に戻った。

明日、佑典(ゆうすけ)は中学校を卒業する。

1年生の時は、佑典の存在を知らなかったが、去年の春、佑典に話し掛けられた。
初めは佑典に素っ気なく接していたが、佑典の優しさに触れて、佑典に心を開き始めた。