下校時間になり、一斉に生徒達が教室から出てくる。私も紛れてシレーっと帰ろうとしたが、パーカーのおかげで即バレ。先生に、「おい!何やってるんだ!!お前は生徒指導室だろうがっ!!」とキレのいいツッコミを食らってしまった。まあ、どーせ下駄箱は生徒で溢れかえってるし、格好でバレてたし。どっちみち帰れなかったことは確かだ。しょうがなく先生に連れられ、生徒指導室に入った。
「おーい!藤鼠!コイツがあの有名問題児の二藍だ。しっかり説教してやってくれ!」
私はすかさず『余計なお世話だよ!!』と言ったが先生は生徒指導室を後にしてしまった。

***

「君が二藍水萌さん?」
不意に声をかけられた。その声の主が何処にいるのかもわからないけど、ただ…


心地よい感覚に浸る感じがした。
「問題児ちゃんって聞いたから、怖い子くて気が強い子かなぁと思ったけど、ふわふわ系の子だね。」
『ふわふわ系?』
思わず声に出してしまっていた。だって、初めてそんなこと言われたから。

「うん。ふわふわ系。なんかこう…猫ちゃんみたいな?感じかな?」さっきまで隣からしていた声がいきなり耳元から聞こえたので少しビクッてする。
急いで振り向くと、そこには背が高く見たことがない男子高校生が立っていた。「こんにちは」と言い、気づいたら私の髪を指先でくるくると遊んでいた。

『なっ・・・』

"ぼっ"と音を立てるように一気に顔が熱くなるのがわかる。恥ずかしさのあまりに、急いで顔を隠した。彼は私の頭を撫でながら、「かわいいな…」と小さく呟く。

『い、いま…かわいいって…』
「うん。だって、かわいいものはかわいいから。」

そんなこと言われたのも初めてだっし、
こんなこと言うやつに出会ったのも初めてだ。
どっちかって言うと、私は「かわいくない」と言われ続けた方だったから。そんなこと、言うなよ…とも思った。
『お前、垂らしなのか!?』
「んなわけないよ。ははっ」
『なんで笑うんだよ!!』
「いや。ははっ、ごめん。ついおかしく思えてしまって。」
『はぁっ!?私の事、からかってるでしょ!?』
「からかってなんかないよ。」
「ただ、かわいいなぁって思って…」
『〜〜っ!!』

よく考えてみればそうだ。いや、そうだったのかもしれない。

私が馬鹿だから、馬鹿とおもっているから、からかっているんだ。きっと。

そう思えば思うほど、腹が立ってきた。

『気持ち悪いんだよ!!そういうの!!』
『思ってもないくせに思ってる様な事を言な!!』