何処へ向かうかも決めていない。
そんなドライブを僕と幼なじみの彼女でしている。
ちょうど海が見えてきたところで、
「ねえ、私好きな人がいるんだけど、どうすればいい?」
助手席に乗っていた彼女が相談を仕掛けた。

 「恋愛ねぇ…」
僕は考えを膨らます。おぼろげながら、全体の構造が見えてきたところで僕は言った。
「恋愛は直球がいいらしいよ。まわりくどい手使ったら失敗したって作者が言ってた」
「そうなんだ。ちなみに、それ何処で聞いたの?」
「夢の中だったかなぁ」
「なにそれ」
彼女は笑った。そして、あっ、と声を漏らした。
「あれ?私、久しぶりに笑ったかも。ありがとう、凪(なぎ)くん」
彼女は笑顔になった。

 少し進んで山林の中に入った。
「ねえ、私直球使うね」
「うん」
すると、彼女がどんどん近づいてきた。
僕はなんだろう、と首を傾げる。
そして、頬に何かが触れる感触がした。
柔らかいもの?
彼女は照れた表情で笑っている。
キスだと分かった瞬間、心の中でえええー!!!と叫んだ。
隣で小さく「好きだよ」と聞こえた。
マジかよ。

 次はビルが立ち並ぶ街の中。車がやたら多い。
「ねえ、これいる?」
彼女がくれたのは風船ガムだった。パッケージの色でソーダ味だと分かる。
僕は一つ手に取り、口に入れる。
そしてぷぅっと力いっぱい膨らました。

 「…ぎくん、凪くん?」
妻の声で甘い回想がパチンとはじけた。
目の前にはがたいのいい女性がいる。まるで力士のような。
まさか、20年前はあんなに可愛くて細身だったあの子がこうなるとはな。とほほ。