「美雨。ごめん、遅れちゃった」
そう言って近づいて来た2人の男女。
「久しぶり、蘭、夏目」
東京に溶け込んだ感をアピールするため大人っぽく見えるように着飾った私は幼馴染みの2人に手を振る。
「東京って広いね。迷っちゃう」
なんて言っている蘭は夏目と同じ地元の大学に通っている。
「それで、2人の行きたい場所って?」
今日は2人が一緒に行きたい場所が東京にあると言っていたのでこうして待ち合わせをした。結局どこに行くか尋ねても当日のお楽しみ!と言われ、教えてもらえなかった。
「ついてからのお楽しみ」
「ここ?」
蘭と夏目に引っ張られ着いたのは国立競技場。精一杯着飾った女の子たちが集まっている。
「そう。行こう」
会場入りする時に目に入った看板に心臓が音を立てた。
「ねぇ、まさか「ギリギリだったからもうすぐ始めるよ」」
私の問いはあっけなく夏目に遮られ、心臓の音はどんどん大きくなって来る。
やがて会場が暗くなり、パッとライトがステージを照らした瞬間、
「あっ」
と声が漏れる。
キラキラの衣装を纏った遥希がたくさんのスポットライトを浴びて輝いていた。
たくさんのファンに笑顔を届けて、全力で歌って踊っている。
オープニング曲が終わり、2曲目のイントロが流れた途端に涙が溢れた。
「もう話せない君へ♪」
あの曲だ。遥希が私の歌に合わせて踊った最後の曲。
遥希は私のこと忘れてなかったんだ。
スポットライトに照らされて輝く遥希の視線と一瞬、私の視線が絡んだ気がした。
END