灼熱の白夜よりも熱い恋をきみと

「『月影』っていうのはね、青軸性《あおじくしょう》だから萼《がく》が黄緑で花は白いのよ。控えめで上品で主張しすぎないで。でもすごくいい香りがするの。特に夜、見に行くとすごく素敵なの」

「夜桜ならぬ夜の梅花か」

「ほら、視界がおぼろげになると、他の五感が敏感になるっていうじゃない。だから夜、梅の花を見に来ると、この香りがなおさら際立つんだ。月の影に映える梅の花だから、『月影』。……でも、もう夜の月影は見れないだろうけどね」

 あかねが梅の樹を見上げてそういう間、しおんはずっとあかねの横顔を見ていた。そしてぽろっと零す。

「月影……あかねみたいだね」

「えっ?」

 あかねははっとしてしおんに振り向く。

「目立たないけど、とってもきれいだ。俺が夜だとすれば、きみは夜に映える月影だ。闇夜を幸せな香りに染めてくれる」

「しおんくん……」

「俺はきみだけには思っていることが平気でいえるんだ。だってきみはそれをちゃんと受け止めてくれるんだから」