それには少々面食らった。口説き落とすことを母親に宣言していたなんて。するとあかねの横にいるしおんは照れた顔。

「母さん、余計なこと言わなくていいから」

 といって顔をポリポリとする。その表情はただの男子であって、変人とか天才とかそういう人並み外れた要素は感じられなかった。

 あかねはしおんの母に見とれる。若いお母さんだなぁ。しかも美人で清楚。しおんくんがイケメンなのもわかるしどことなく似ている気がする。心の中で思いつつちょっとばかり憧れを抱く。

「母さん、俺、あかねと出かけてくるから」

 しおんがそういうと、しおんのお母さんは一瞬、ふっと不安そうな表情になった。けれどもすぐに笑顔に戻って、「いってらっしゃい、気をつけてね」といってくれた。

 それからすこし膝を折って目線を低くし、あかねに向かってこういう。

「ごめんなさいね。しおんたら自分の好きなことには夢中なんだから。他はおろそかなのよね」

「あっ、でもしおんくん、成績すごくいいですよね。あたし、すごく羨ましいし」