「皆様のお楽しみ、『アズ・ユー・ライク』のお時間がやってまいりましたぁ」

 世界の終わりを目前に控え、国民の楽しみになったこの番組は、犯罪を抑止するための政策のひとつとして設けられた。

 それはごくシンプルなもので、「犯罪者の裁きは被害者およびその親族など、裁きを希望する者に委ねる」。そして、「その後の処遇を番組で公開して良い」というものだった。

 犯罪で家族や財産を失った人間の裁きは、犯罪者の所業よりはるかに恐ろしいものだった。そして裁きは番組で公開された。それが功を奏してこの人類滅亡の間際だというのに、日本では犯罪という犯罪がほとんど起こらなかった。すでに犯罪によって滅亡した国は多いというのに。

「今日の裁きは、娘を殺害された父親によるもので、方法はルーレット方式です。道具は一通りそろっています。さあ、どんな方法が当たるのか、ドキドキしますね!」

 東堂が手を差し出すその方向には、加害者と思われる男性が磔《はりつけ》にされていた。恐怖に顔が歪み震えあがっている。それをにらみつけるひとりの男性が目前に立ち、その男に向かって目の前で叫ぶ。