高校の入り口からすこし離れたところにある喫茶店「エルシド」。イベントを終えてぐったりとなったあかねはとりあえずここで一休みをすることにした。

 店の中はレトロな食器やアンティークの小物がところどころに飾られていて、雑然としているけれど趣がある。

 壁に取り付けられたオレンジのブラケットの灯りもおぼろげで落ち着いている。モダンミュージックをかなり控えめな音量で漂わせていて、それが店の雰囲気づくりに一役買っているように感じられた。

 そんなふうに楽しむ心の余裕ができたのは、ある意味諦めを覚えたからなのかなと思い目の前に鎮座するイケメン変人、高槻 しおんを上目遣いでちら見する。

 するしおんはふっと笑みを零す。あかねもにこっと作り笑いをする。笑顔に笑顔でお返しするのは聖者の気持ちが理解できたのだと自負する自称被害者の末広 あかね。